私の原風景は木材を刻む大工さんの背中です。大きな背中に大きな笑い声。祖父の工務店でそんな職人さん達に囲まれて育ちました。 大学在学中から職人さん達と一緒に現場で働き始めまずは掃除、雑用から・・・。独特の現場用語に四苦八苦。
「そこのダイサン持って来て」・・・大さんって誰?、そんな人いないし!!
「ネコで運んどいて」・・・猫の手を借りるの?、そんな猫いないし!!
「そこ、タコで突いといて」・・・蛸?生臭い?そんな蛸いないし!!
今では笑い話にしかなりませんが初めのころはそんな毎日でした。

 仕事、用語を覚えるに従い現場が楽しくなってきました。私が本気で仕事を覚えようという事がわかってきたのか、職人さん達の態度も変化して来ました。 材木を刻む作業を教えてもらったり、墨付けの番号(い、ろ、は、に、一、二、三・・・等)は太陽の昇る方角からつけていくこと、覚えた仕事が慣れたころに怪我をしやすいことなど大事なことを教えてくれるようになりました。 神戸の異人館や古民家の移築現場で一緒に働いたことは今でも私の財産です。

 また、阪神淡路大震災の経験も大きな転機になっています。当時は駅舎も被災した六甲道というところに住んでいました。近所でも多くの方がお亡くなりになり地震の怖さと建物の耐震性の重要性を身に染みて実感しています。 住宅の改修工事では住みやすさ、使い勝手と同様に耐震性の重要性を説明させていただいてます。在来の建物、古民家に関わらず大工さんの技術と供に構造計算等の科学的な根拠も重要な要件であると確信しています。

 最後に兵庫県下でも多くの古民家が存在しています。古民家に対する助成金の制度も充実しています。耐震性に不安のあるかた、空き家になってしまった古民家の活用法の相談などお気軽にご相談ください。

一般社団法人日本伝統再築士会兵庫支部 支部長 鶴谷 充男